
5月24日、大井にいた小学生の君へ
はじめまして、僕は群凪(むらなぎ)です。君の事は、お店の人から聞いて知りました。 その日のお客さんからも、『少年のキラキラ輝く眼差しにとても感心しました』というメールが届き、すごく気になりました。(君の隣で絵を選んでいた女の人です。おぼえていますか?)
君は何度も売り場に現れ、気に入った絵の値段を真剣に聞いていたそうですね。絵が大好きで、パソコンで絵を見るために、ショップカードを持ち帰った事も教えてもらいました。
僕の絵は、あまり上手ではありませんが、君が自分のお金で手に入れようとしてくれた事を、僕はとても嬉しく誇りに思います。 そこで僕は、君にお礼の手紙を書こうと思いましたが、名前や住んでいる所を知りませんので、いつか君に見つけてもらうのを願い、ここに埋めてもらう事にしました。
君が気に入ったのは、白い魚の絵でしたね。なので、お礼にこの魚の事を少しだけ書きます。 この魚が棲むのは、人の頭の中です。何を食べているのかは誰にも分かりませんが、それでも、生きるためには沢山のきれいな水が必要です。 その水は君の中にも流れていて、その水のまわりにはいつか森が育ちます。君が大きくなると君の中の森も大きく育ちます。 大きな森には沢山のものが棲みつきます。やがて恐ろしいものも棲みつくでしょう。そしてもしも、恐ろしいものが増えてしまうと森の水は濁りはじめます。 この魚は水が濁ると大変困るので、その時、がんばって恐ろしいものを退治します。大きく鋭い牙はそのためのものです。この魚はそういう魚です。 もしかしたら、君の中にも棲んでいるのかもしれませんね。
いつか君が大きくなると、魚だけでなく、他にも色々なものが棲むようになるでしょう。そして僕の森よりも大きく、とてもとても美しい森が育つと思います。 僕や、君が出会ったお店の人は、君の中に流れる水がいつまでも透きとおり、あの日の君自身のように輝き続ける事を、信じています。
2003.5.29 群凪